大判例

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大阪高等裁判所 平成6年(ネ)1418号 判決

控訴人(①事件)

株式会社滋賀ファイナンス

右代表者代表取締役

田中勝太郎

右訴訟代理人弁護士

松村信夫

控訴人(②事件)

株式会社竹島商事

右代表者代表取締役

竹島京子

控訴人(②事件)

竹島京子

控訴人(②事件)

竹島幸之輔

右法定代理人親権者

竹島京子

右三名訴訟代理人弁護士

木村靖

被控訴人(①事件)

第一生命保険相互会社

右代表者代表取締役

櫻井孝頴

被控訴人(②事件)

住友生命保険相互会社

右代表者代表取締役

浦上敏臣

被控訴人(②事件)

共栄火災海上保険相互会社

右代表者代表取締役

鈴木秀治

被控訴人(②事件)

東京海上火災保険株式会社

右代表者代表取締役

五十嵐庸晏

右四名訴訟代理人弁護士

梅谷亨

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

一  控訴の趣旨

[①事件]

(丙事件)

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人第一生命保険相互会社(以下「被告第一生命」という。)は、控訴人株式会社滋賀ファイナンス(以下「原告滋賀ファイナンス」という。)に対し、金四〇四一万七三三六円及びこれに対する平成四年八月二一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

[②事件]

原判決を取り消す。

(甲事件)

1 被控訴人住友生命保険相互会社(以下「被告住友生命」という。)は、控訴人株式会社竹島商事(以下「原告会社」という。)に対し、金八八〇〇万円及びこれに対する平成四年五月九日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2 被告住友生命は、原告会社に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成五年一月二一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

(乙事件)

1 被控訴人東京海上火災保険株式会社(以下「被告東京海上」という。)は、控訴人竹島京子(以下「原告京子」という。)に対し、金一七〇四万円及びこれに対する平成四年七月一八日から、控訴人竹島幸之輔(以下「原告幸之輔」という。)に対し金七五九万円及びこれに対する平成四年一〇月一六日から、各支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2 被控訴人共栄火災海上保険相互会社(以下「被告共栄火災」という。)は、原告京子に対し、金四九四万円及びこれに対する平成四年七月一八日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  事案の概要

原判決の「第二 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、四枚目裏一行目の「加入の日」の次に「(右保険契約の加入の日は平成三年八月一日である。)」を加える。

三  争点に対する判断

次のとおり補正するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

1  五枚目表二行目の「488.3キロポスト」を「488.2キロポスト」に改め、同八行目の「損傷」の前に「大きな」を加え、同裏五行目の「三三」を「三四」に改め、その次に「、三八の二・四、四一の一ないし三」を、同六行目の「原勇人の証言」の次に「、弁論の全趣旨」を加え、同一〇行目末尾の次に「ただし、同図面中央右寄りの開溝拡大部分の右側側壁の幅『10』を『96』に改める。」を加える。

2  六枚目表四、五行目の「488.3キロポストの表示板より約四メートル北方の地点から、垂直距離で約二〇メートル下方の」を「488.2キロポストの表示板付近の地点から、垂直距離で約二〇メートル下方で」に、同六行目の「地点の、」を「地点にある」に、同裏三行目の「血痕は付着していなかった」を「顕著な血痕の付着は認められなかった」に改め、同九行目の「人が」の次に「意図的に」を加え、更に同一一行目末尾の次に改行の上次のとおり加え、同末行の「甲一」の次に「、乙二五の二」を加える。

「なお、フェンスのない部分でも、高速道路の側壁の高さは路面から約一メートルあり、かつ側壁の外側には更にパイプ群があるのであって、人が意識的にそこを越えなければ、高速道路から転落するということはないものと認められる。」

3  八枚目表一行目の「乙三六の三ないし五、原告京子の供述」を「甲七ないし一一、一三の一ないし三、一四の一・二、一五の一ないし三、一六の一ないし三、乙二八ないし三一、三六の三ないし六、四二、丙一五、証人山本菊高の証言、原告京子の供述〔当審分を含む。〕、弁論の全趣旨」に改め、同三行目の「原告会社は」の次に「飲食店の経営及び不動産の仲介等を営業目的としていたが」を加え、同行の「不動産取引」から同六行目末尾までを「第一二期(昭和六三年七月一日から一年間)、第一三期(平成元年七月一日から一年間)は売上げを伸ばし、相当の利益も上げていたが、いわゆるバブルが崩壊しはじめた第一四期(平成二年七月一日から一年間)は売上を前期の約四億四八〇〇万円から約二億五五〇〇万円と減少させ、利益もわずか約七万円に激減させた。」に、同八行目の「三件」を「数件」に、同九行目の「半年位前」を「同年五月」に、同一一行目の「もしくは」を「及び」に、同一二行目の「約一億円」を「一億円以上」に改め、同裏四行目の「原告京子の供述」の次に「、弁論の全趣旨」を加える。

4  八枚目裏一二行目冒頭から九枚目裏二行目末尾までを次のように改める。

「1  以上認定した諸事情、特に、人が意識的に高速道路の側壁等やフェンスを乗り越えなければ、そこから転落する状況にはないものと認められること、竹島が発見された現場周辺の状況、竹島の受傷状況、その死亡原因及び竹島が約二〇メートルの高所から落下したものと想定した場合に右受傷状況との間に何ら矛盾をきたさないこと等からすれば、その動機は不明であるが、竹島は、高速道路京滋バイパス488.2キロポストの表示板付近の地点から投身自殺をしようと、道路側壁及びその外側のパイプ群又はフェンスを乗り越えて飛び下り、原判決添付図面(4)の『上砂が崩れている部分』の地点に落下し、その際、頭部、背部、腰部等を地面に強打した結果、打撲による外傷性クモ膜下出血及び多発骨折による外傷性ショック死により死亡したものと推認するのが相当である。

前記認定のように、原告会社の業績が悪化しはじめ、かつ原告会社及び竹島は多額の負債を抱えているにもかかわらず、短期間に高額の保険契約を締結し、多額の保険料を支払ってきたことなど、その保険加入に不自然と思われる点が全くないとはいえないが、右業績が悪化しはじめたとはいえ、わずかではあるが利益も上げていたのであり(したがって、原告会社の業績が悪化しはじめたことが、直ちに竹島の自殺の動機になったとは認められない。なお、大口債権者であった原告滋賀ファイナンスは、原告会社及び竹島所有の各不動産に対して、相当額の担保権を有していたことも認められる〔丙七ないし一四、一六の一ないし七〕。)、そのような状況のもとで、右高額の保険契約を締結し、多額の保険料を支払ったとしても、融資の条件等として事業主の保険加入を要求されることがあることは公知の事実であるから、そのことが、極めて不自然、不合理なことであるとまではいえない。そうすると、右高額の保険契約の締結等を、竹島の死が自殺であると推認する積極的事情とすることは許されないが、ともかく、原告会社の業績は悪化しはじめていたのであるから、その中で多額の保険料の支払を負担し続けなければならない状況は原告会社及び竹島にとって望ましいものではなかったことも明らかであるから、右事情のあることが、右竹島の死が自殺であることの前記推認の障害になるものでもない。」

5  九枚目裏三行目冒頭の項番号「3」を「2」に改め、同五行目の「開溝部」の次に「(乙三四)」を加え、更に同九行目と一〇行目との間に次のとおり加え、同一〇行目冒頭の項番号「4」を「3」に改める。

「また、控訴人ら(②事件)は、竹島が死亡当日身につけていた着衣及びベルト、靴などにみられる痕跡は、高所からの飛び下りと矛盾する旨主張するが、証拠(検甲一ないし四、六ないし一五、検乙二八ないし三五、三八、三九)により認められるその着衣等への泥等の付着状況は、その落下場所の状況や落下後身体の移転もあり得ることを考えれば、高所からの飛び下りと矛盾するものとはいえない。」

6  一〇枚目表二行目冒頭の項番号「5」を「4」に、同五行目の「棄却し」から同七行目末尾までを「棄却すべきである。」に改める。

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。

(裁判長裁判官 中川敏男 裁判官 北谷健一 裁判官 松本信弘)

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